「口臭がある」というと、お口の中が不衛生になっているイメージや虫歯や歯周病などのお口の病気をイメージすることが多いのではないでしょうか。
でも実は「口臭」の原因は、お口の中の問題だけではありません。
全身の様々な病気が原因となっている可能性もあるのです。
今回は、主に全身の病気が原因になっている口臭とその対処法について詳しく解説します。
口臭の原因は大きく分けて次の4つに分類されます。
多くは、お口の中に問題がある場合ですが、「全身の病気」や「食べ物」が原因になっていることもあるのです。
また「生理的口臭」といって、誰にでもある正常な範囲の口臭もあります。お口の中が完全に無臭であることはありません。
虫歯や歯周病がある場合や歯垢や食べかすなどの汚れが溜まっている場合は、口臭が発生することがあります。
虫歯や歯周病が進行すると、お口の中の組織が破壊されたことによる腐敗臭がするようになります。
また、お口の中が不衛生で虫歯菌や歯周病菌が多いと、細菌が臭いを発生することがあります。
口の中が原因ではなく、全身の様々な病気が原因となっている場合があります。
代表的なものでは、耳鼻咽喉系の病気・呼吸器系の病気・消化器系の病気・糖尿病・肝硬変や肝臓癌・トリメチルアミン尿症などが挙げられます。
食べた物が口臭の原因となる場合があります。
代表的なものには、ニンニク・ニラ・ネギ類が挙げられます。これらは「アリシン」という成分が臭いの元になっています。
またニンニクや玉ねぎ、卵や乳製品は、硫黄を含んでいて臭いが発生しやすい食べ物です。
他にも、脂っぽい肉、キャベツ、小松菜、ブロッコリーなどのアブラナ科の野菜、そして納豆も臭いのもととなり得ます。
生理的口臭は、誰にでもある口臭です。
人は毎日食事をとり、お口の中では様々な代謝が行われているため「お口が無臭」ということはありません。
多少の臭いはあるものです。
特に起床時や空腹時、緊張時は、唾液の分泌が減少するため、細菌が増殖して臭いが強くなることがあります。
また、女性の場合は生理中や生理前後にも口臭が強くなる傾向にあります。
口臭の原因となる全身の病気には、糖尿病・肝硬変や肝臓癌・トリメチルアミン尿症などの代謝性疾患や、胃癌や食道癌などの消化器系の病気、また耳鼻咽喉系や呼吸器系の病気が挙げられます。
お口の中に虫歯や歯周病などが無く、衛生的にしているのにも関わらず、「口臭が気になる」「口臭を指摘される」という場合には、全身の病気が潜んでいる可能性もあります。
癌などの大きな病気が潜んでいることもあるので、気になる場合には、口臭をきっかけに検診を受けることをおすすめします。
口臭は、慣れてしまうと自分では臭いを感じにくいことがあります。
口臭をセルフチェックで発見することは難しいので、市販の口臭チェッカーなどを利用するのも一つの方法です。
病気の種類によって、口臭の臭いの種類が異なります。
具体的な例は次のとおりです。
呼気が通る過程やその周囲にトラブルや腫瘍があると、タンパク質の壊疽臭が発生します。
糖尿病になると、糖が代謝されずに脂肪が代謝されるため、アセトンが必要になり、その結果、呼気中に酸っぱいアセトンの臭いが含まれるようになります。
糖尿病独特の臭いで、甘酸っぱい、アルコール風、または熟したリンゴや柿のような香りと形容されます。
アンモニア臭が発生します。
健康な状態だと、アンモニアは肝臓で尿素に変えられ排泄されていきますが、肝硬変や肝癌などにより、肝臓の機能が低下すると尿素として排泄できず、体内を巡って呼気にも含まれるようになります。
魚のような生臭い臭いが発生します。
食べたものによって消化の過程で「トリメチルアミン」という物質が生じることがあり、通常であれば肝臓で代謝され排出されますが、トリメチルアミン尿症になると、呼気や汗、尿に現れてしまい、魚のような生臭い臭いになります。
ここまでに挙げた病気以外に、病気や服薬などにより唾液の量が減少している場合、お口の中の細菌が繁殖しやすくなり、口臭が強くなることがあります。
唾液が減少する要因には次のものが挙げられます。
病気の中には、唾液が減少してしまうものがあります。
唾液腺が損傷され、唾液の分泌が難しくなります。
女性ホルモンの減少により、唾液の分泌が難しくなります。
尿量が増加することで、脱水状態が発生しやすくなり、それに伴い唾液の分泌量が減少します。
顔面の一部に麻痺や筋力の低下がある場合は、唾液が分泌される「唾液腺」への刺激が少なくなり、唾液が出にくくなります。
ストレスや過度な緊張があると、自律神経のバランスが乱れて、唾液の分泌が少なくなることがあります。
加齢により、筋力の低下や全身の水分量が減少します。
また、唾液の出る唾液腺が萎縮するため、唾液が出にくくなります。
薬の一部には、唾液の分泌が減少する副作用があるものがあります。
具体的には、次のような薬です。
処方薬と一緒に薬の効果や副作用・注意点などが書かれた書面をもらうことがありますが、副作用の欄に「口渇」と表記されているものは、唾液の分泌が減少するものです。
お口の渇きが気になる場合には、薬剤師さんに確認すると良いでしょう。
原因となっている疾患を治すことが根本的な解決になります。しかし、簡単に治る病気だけではありません。
なるべく口臭を減らすためには、お口の中を清潔にするなど、次のことに注意して過ごすのが良いでしょう。
お口の中の臭いと病気による臭いが混ざると、さらに強い口臭になります。
お口の中を衛生的に保つように心がけましょう。毎日の歯磨きでは、歯ブラシ以外にデンタルフロスや歯間ブラシも使い丁寧に磨くようにしましょう。
自己流の歯磨きを続けていると、いつの間にか「磨き癖」がついてしまい、磨き残しを作ってしまいがちです。
歯科医院のブラッシング指導を受け、効率的に汚れを取れるようにすると良いでしょう。
お口の中に汚れが多いことや虫歯、歯周病がある場合は、口臭がさらに強くなります。定期的に歯科医院を受診して、お口のチェックやクリーニングを受けると良いでしょう。
虫歯や歯周病の早期発見につながり、早めに適切な治療を受けることができます。
また、定期的なクリーニングでは、普段は除去しきれない歯石や歯垢を除去することができ、お口の中を衛生的に保ちやすくなります。
唾液の量が減少している場合には、唾液腺マッサージがおすすめです。
お口の周りには、唾液が出るところがたくさんありますが、その中でも大きな唾液の出る元となる組織が3つあります。「顎下腺」「耳下腺」「舌下腺」です。
これらの周囲を優しくマッサージをすることを習慣にすると唾液が出やすくなります。
下顎の横の骨の下あたりに位置します。
数本の指で優しく押し上げるようにして、マッサージをしましょう。
耳の前で、頬骨の少し下あたりです。
両手のひらを使って円を描くように、マッサージしましょう。
下顎の前方、顎の先の下あたりに位置します。
両手の親指を使って優しく押し上げるようにマッサージをしましょう。
マッサージをしても、すぐに唾液が出ないこともあります。お風呂に入ってリラックスしている時などに続けてみましょう。
唾液の分泌には、水分補給も大切なので、必ず水分補給もするようにしましょう。
これらを利用するとお口の中がさっぱりした感じになるため、きれいになっていると勘違いしてしまうことがありますが、汚れが取れているわけではありませんので、歯磨きは丁寧に行うようにしましょう。
口臭の原因は、お口の中の問題だけではありません。
全身の病気が原因となっている場合もあります。
お口の中に虫歯や歯周病などの問題が無く、衛生的にも良好な状態なのに口臭が気になる場合には、他の病気が潜んでいる可能性も頭に入れておきましょう。
ただし口臭の多くは、お口の中に問題があるケースです。口臭を家族などに指摘されたり、自分自身で臭いが気になったりするようであれば、まずは歯科医院でチェックを受けると良いでしょう。
受診する際には、「口臭が気になる」ことを伝えておくと安心です。
歯科医院では「口臭」をお口の状態把握の一つの目安として日頃から捉えていますので、安心してご相談ください。
歯科医院を受診して問題が無いようであれば、他の診療科受診をおすすめします。